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育ちたがる金属Vol,1.9 「熾烈ー未」

story

ある朝、焦げ臭さに目を覚ますと、部屋の中に霞がかかっていた。

机上の「万象」のあたりが発熱している。どうやら姿を変えつつあるらしい。

 

音を立て、ある部分は生まれ、ある部分は崩れ落ちてゆく。

 

慌ててタオルで包んでベランダへ放った。

 

コンクリートに落ちた「万象」は姿を変え、なおも姿を変え続けている。

次第に光を強め、まっすぐ見ることもできなくなってしまった。

 

火事になっては困るので、とっさに飲み残しのコーヒーをかけてしまった。

 

水がはじける音とともに光が弱まり、水蒸気の合間から姿が見えた。

 

 

 

 

「万象」はすっかり姿を変え、人間の姿に近いものになっていた。

 

無遠慮な角はそのままに、いびつなひび割れはそのままに。

 

人をまねたのだろうか。金属が?

 

考えたのだろうか。無機質が?

 

わからない。わからないからこそ胸が躍る。

 

机の惨状を思い出すまで、私はそこで「彼」を眺めていた。

 

 

 

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