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育ちたがる金属Vol,6 「Ravi」

宇宙空間はひどく寒かった。
金属のこの身体に、外気温は関係ない。
ではなぜ私は「寒さ」を感じているのだろう。
何なのだろう。
これまで結論を急ぎすぎていた。
”母なるもの”はそう言った。
ならば、私のこれまでの思考、行動はすべて無駄だったのだろうか。
あまりにも広い空間で、小さく膝を抱えて考える。
……答えはでない。
ふと、肩に動きを感じた。
小さなキカイがそこにいた。



確か、”母なるもの”の洞窟で案内をしてくれた。
せわしなく、ちょこちょこと動き、私の身体から離れてはあわててひっつく。
キカイらしからぬ動きに、思わず笑みがこぼれた。
少しだけ、寂しくなくなった。
その時、はたと気づいた。
私が見落としていたものとは、
寒さの正体とは、一体何だったのか。
急いで針路を地球に向ける。
私にもまだやれることはありそうだ。
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